Googleドライブの標準設定は利用者が鍵を独占するエンドツーエンド暗号化(E2EE)ではない。

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非公開は「他人に見せない」だけ

Googleドライブの標準設定は、利用者が鍵を独占するエンドツーエンド暗号化(E2EE)ではない。通信中も保管中も暗号化されてはいるが、鍵を持つのは事業者側だ。鍵を持つ側は、必要なら中身を検査できる。暗号化には大別して3種類ある。

  1. 通信路だけ暗号化する方式
  2. 保管中も暗号化するが、鍵は事業者が持つ方式
  3. 利用者だけが鍵を持つE2EE

Googleドライブの標準は2番だ。DropboxやOneDriveも同じ系統で、OneDriveの「個人用Vault」も鍵はMicrosoftが持つ。したがって「非公開」は共有リンクを切る意味であり、Googleのシステムから見えなくする意味ではない。

逆に、Google Workspaceのクライアントサイド暗号化(CSE)では、鍵を組織側が管理する。公式ヘルプは、CSEされたファイルはフィッシングやマルウェアのスキャン対象にならない、と明記している。サーバーが中身を読めないからだ。標準の個人向けドライブには、この前提がそのまま当てはまらない。
検査の中身は、人が全ファイルを開く作業ではない。画像の指紋照合(知覚ハッシュ)と、機械学習による分類だ。既知の問題画像に近い特徴、あるいはポリシーに抵触すると判断された描写を、システムが機械的に拾う。

公式数字が示す「ほぼ自動」

人が見ていない、という説明は感覚論ではない。Google自身の透明性レポートが規模を出している。対象期間は2025年7月〜12月。対象はGoogleとYouTube。報告されたCSAM関連コンテンツは570万7562件。内訳は次の通りだ。

  • 自動検出:569万1747件(99.7%)
  • 手動検出:1万5815件(0.3%)

自動検出の中身として、レポートはハッシュ照合と機械学習分類器を挙げている。手動はユーザー報告、政府・法執行機関の報告、優先報告者などだ。つまりこの半年間、報告の99.7%は機械が先に見つけている。人が全件を開いているわけではない。一方で、機械が先に見つけるからこそ、非公開フォルダでも引っかかる。

読み方は単純だ。円のほとんどが自動検出。中央の570万件は「人が700万枚を目視した」数字ではない。同一内容が複数アカウントや複数回で見つかると重複して数えられる、とレポート自身も注記している。それでも方向は明確で、検出の主体は人ではなくシステムだ。

コンテンツ件数だけ見ると誤解する

同じ半年間には、別の公式指標もある。

  • NCMECへのCyberTipline報告:86万2284件
  • CSAM違反で措置が講じられたアカウント:36万5597件

コンテンツ件数、報告件数、アカウント件数は同じものではない。1件の報告に複数コンテンツが含まれることも、1人のアカウントから複数ファイルが見つかることもある。アカウント措置には、停止だけでなくサービス制限も含まれる。

重要なのは比率だ。検出はほぼ自動。その先で報告とアカウント措置が走る。漫画家の原稿BANでGmailまで止まったのは、この「ファイル単位の警告」が「アカウント単位の処分」に跳ねる構造があるからだ。
透明性レポートはこう書いている。ユーザーのGoogleアカウントでCSAMが見つかった場合、NCMECへの報告などの措置を取る。加えて、サービスの停止やアクセス制限もあり得る。影響を受けたユーザーには通知し、不服申立ての機会を与える、と。
再審査が通らなければ、ドライブの1ファイルの問題が、Gmailを含むアカウント全体の停止になる。非公開だから軽い、という段階はない。

では「中を見ている」のか

正確に言うと、次の整理になる。

  • 社員が日常的に個人フォルダを閲覧している、という意味では、通常は見ていない
  • ただし標準ドライブでは、システムがファイルの特徴を照合できる
  • 照合の99.7%は自動で、人が見るのはごく一部
  • 非公開設定は、その自動検査を止めるスイッチではない

「誰にも見せていないのにBANされた」は、利用者の感覚としては正しい。技術と規約の側から見ると、見せていない相手は他人であって、預かり先の検査システムではなかった。

鍵を利用者が独占するサービスなら、サーバー側の同じ検査は成立しにくい。講演でMEGA、Proton Drive、Tresorit、iCloudの「高度なデータ保護」が挙がったのは、その違いだ。ただしE2EEでも、ファイル名、サイズ、更新時刻などのメタデータは事業者側に残る。完全な不可視ではない。
非公開の安心感は、共有範囲の話だ。検査されるかどうかは、鍵を誰が持つかの話だ。この2つを混ぜたままクラウドに原稿を置くと、今回のように「自分しか見ないファイル」が、アカウント全体を止める材料になる。
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